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【プロフェッショナル/庵野秀明】仕事の流儀(上)を見た感想 : 冒頭数分で確信するおもしろさ

はじめに

NHKで放映された「プロフェッショナル 仕事の流儀 庵野秀明スペシャル : さようなら全てのエヴァンゲリオン~庵野秀明の1214日~」をシン・エヴァンゲリオンを劇場で見た上で視聴しました。ちなみに同作品は素晴らしかった...

私は庵野さんについては顔くらいしか知らない状態でしたが、前半部分を見て一言「おもしろい」。そして、こういう人だからこそシン・エヴァンゲリオンが作れたんだな...と感激しました。

以下はネタバレありの感想です。

冒頭から最高

冒頭いきなり庵野さんがスマホを持ちながら駅の構内を走るシーンにてナレーションで「密着を始めてまもなく、私達は悟った。この男に安易に手を出すべきでは無かったと。」と入ります。そして確かにインタビュアーが質問をするも即レスで「秘密」と連呼。おっ、おもしろそうな出だし。

庵野秀明さんは60歳、「生み出す映画は唯一無二」と紹介され、その一例としてエヴァの熱狂を表す映像にてメガネをかけた男性が「俺エヴァ見てんだ..と思った瞬間、涙が出てくる」と語る場面が差し込まれます。

同番組はエヴァが完結すると聞いて取材を申し込んだもののNHKスタッフ側は苦悩続き。庵野さんに「ここ撮ってもしょうがない」と呆れられたり、「いい人のところしか使わないで」と言われたカメラマンが「それは甘いです」と返すと「だったらこの企画は無しになるので大丈夫です」と冗談か本気か分からない顔で言う様が映ります。

ここでいきなり驚いたのは、庵野さんが「ここで無理したら身体が壊れる、心が壊れるんじゃないっていうのは、それは一旦無視。面白いものを作るのが最優先」と語る様。「ここで無理したら身体が壊れるところまでやる」と言うのかと思えばまさかのその先...

BGMにはエヴァでも利用された「歓喜の歌」が入りながら

歓喜の歌

歓喜の歌

  • オトマール・スウィトナー指揮/ベルリン・シュターツカペレ
  • クラシック
  • provided courtesy of iTunes
「カメラが捉えたいのは人を楽しませるなら何をもいとわない男の姿。誰も知らない庵野秀明、今宵解禁」と画面が暗転しながら「プロフェッショナル仕事の流儀」とクレジット。かっけ~...

みんなが困惑

2017年9月から密着が始まっていたようですが、現場に行くも総監督の席は空席。困惑するカメラマンは庵野を見つけると撮れ高を気にしてか「寝不足ですか?」など声をかけるも無言の庵野さん。「(エヴァに対する)思い入れは?」と聞かれるも食い気味に「ない」と返す様に笑ってしまいます。

構想を練るためのスタッフ総出の熱海での合宿でも庵野さんのワントップ体制でスタッフが困る様子が映り、スタッフは「オッケーもダメも言われない。右に振っていいか左に振っていいか分からない」と嘆く様が印象的。
 
シン・エヴァンゲリオンでは「モーションキャプチャー」を利用して実際に俳優さんを配置しながらアングルを探る作業があったようで、密着カメラマンにも「アニメはアングルが肝。アングルと編集が良ければアニメーションを動かす必要もない」と持論を語ります。そして周りのスタッフが疲弊気味に「もういいですか?」と言うも庵野さんは「いや、もうちょっと探りたい」とギンギンの返答。

密着カメラマンの「カメラやりたくないですか?」に対して「いや別に。自分の頭の中で作ると脳の中にある世界で終わってしまう」と返しますが、結局自分がカメラを持ってアングルを探り始めます。

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結局自分でカメラ持っちゃう庵野さん
そんな様があるからか、鶴巻監督は「最終的には庵野さんが全部書き換えていく」としんみり言います。

関係者の庵野評と番組への意気込み

裏でアニメエヴァの曲を流しながら映画プロデューサーの鈴木敏夫さんは庵野さんを「正直な人。大人になりそこねた人。だから若い人は共感できる」と解説するシーンが入ります。

残酷な天使のテーゼ

残酷な天使のテーゼ

  • 高橋洋子
  • アニメ
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

また、ミサトの声優をしている三石琴乃さんが大きくてパワフルな様を「使徒みたいな人」と評し、アスカの声優をしている宮村優子さんは「少年と少女のような心を持っている」と語ります。宮村さん相変わらず美しい...

そして庵野さんが「取材の進め方が気になる」とNHKスタッフを呼び出し、「僕を撮っても仕方がない時に僕にカメラが向いていることがある。」と言い、肝として指示をされている人達の戸惑いが面白いのに戸惑いがない自分を撮っても意味がないと言及。NHKスタッフも「もちろんそれも撮らせてもらっている」と反論しますが、「足りない」と言い、「今までと同じやつなら面白くない。面白い番組になってもらって作品が面白そうに見えて貰わないと困るわけだから」とモチベーションの高さを見せます。

終わりに

いやー、こんなに尖っている人だとは知りませんでした。
番組の冒頭映像で「これはおもしろいぞ」と思いましたが、中身に入ってもそのヒリヒリするやり取りになんとも言えない怖いもの見たさがあります。

私も大学院の研究室で教授(ボス)のワンマンで似たような経験をしたことはありますが、トップが確かに抜群にデキる人ならついていくしかないんですよね。

まさかエヴァ制作がこんなヘビーな現場だったとは...。密着カメラマンに同情しながらも面白い番組。残りも楽しみです。