はじめに
NHKで放映された「プロフェッショナル 仕事の流儀 庵野秀明スペシャル : さようなら全てのエヴァンゲリオン~庵野秀明の1214日~」をシン・エヴァンゲリオンを劇場で見た上で視聴しました。
本記事は後編で前記事は以下。
以下はネタバレありの感想です。
壮絶な過去
エヴァンゲリオンの終わり方に不服なアニメファンは凶徒化し、「庵野秀明をどうやって殺すか」というスレッドをネット掲示板に立てて議論する騒ぎにもなりました。そして庵野さんは「それを見た時にどうでもよくなり、アニメを作るとかもういいやと思った」と自殺願望まで出てきたと明かします。
そして密着カメラマンはいい回答が聞けそうだと「踏みとどまったのは?」と聞くと庵野さんは「痛そうだから」と一言。ここに笑いました。
当時、病んでいた庵野さんに声をかけたのは鈴木敏夫さん。「作ることが何よりの薬になる」と仕事を誘い、再びアニメ制作を開始します。
それでも庵野さんは鬱状態になるも、近くで見ていた安野モヨコさんは「みんながいなくなっても私はいなくならない」と声をかけながら「結局は何かを作るのが好きなんだと思う」と陰ながらサポートしていたと明かします。えげつないエピソード...
庵野さんは「今回は自分が大きくなれたからちゃんと終わらせられると思う。自分の状況と作品がリンクするから、ポジティブな方向に行くには自分の中にそれがないと行けない」と語ります。
作るってこういうこと
2018年12月、公開日が迫りますが映画のラスト1/4(Dパート)の脚本が固まらず、結局は庵野さんが脚本からやり直すと宣言。
それを受け、監督の鶴巻さんはカメラマンに目も合わせずに「まずい。結構大変です、スケジュール変わって」と呟き、アニメーションプロデューサーの杉谷さんは「過去最大級にやばい」と言います。
結局はDパートの脚本が上がらないまま前半のアフレコがスタート。
声優に対しても庵野さんはバチバチで「もうちょっと自信なさげがいい」「自信は今くらいでいいが何かが足りない」と指摘するシーンが映ります。
ナレーションにて「例え人を傷つけたとしても自分を貫けるか?」と入り、庵野さんが「全体的におもしろくない。ここは引いてて欲しいしここは引きすぎ。」とアニメーションに指摘をし、「まだチャレンジする余裕ありますか?」という問いにスタッフはYesの返答をするシーンが映ります。後にスタッフは「やるしかないです...」と悲壮にカメラに明かしながらも「作品ってそういうもんでしょとも思う」と語る様にスタッフもまた精鋭だ...と泣けてきます。
結局、締め切りギリギリの2019年3月に最後の脚本を完成させ「作り上げることが最優先、何がなんでも完成させる」とメインスタッフに庵野さんは言います。
そしてその部分のアフレコシーン、「さよなら全てのエヴァンゲリオン」のセリフに庵野さんは「25年分のさようならを詰めてくれれば」と依頼。裏にはエヴァでも流れていたBGMが流れていてなんともエモい映像に。
完成そして試写会
2020年の年末に完成。
密着カメラマンの「なんで命かけれるなんですか?」と問われると飄々と「他にやれることがないから。人の役に立てるのそこくらいしかない」と庵野さんは言います。
ついにお披露目の初号試写会には関係者が参列。
ここで「長い間ご苦労さまでした。本当にありがとうございました」と庵野さんが初めて声を張りながら頭を下げる映像が入った後、作品を作りきり支えてくれたスタッフに「やってよかったなという気持ちをもってもらう、それしか返すものはない」と庵野さんは語ります。その裏では皆が試写会を見て涙を流しているシーンに。
そして熱いのは、試写会を見たスタッフから「おもしろかった。やれてよかったと思った」と欲しい言葉をかけられます。庵野さん、良かったね。
最後に「プロフェッショナルとは?」という定形質問を聞かれた庵野さんはニヤリとしながら「この番組、その言葉がついてるのが嫌いなんですよ。ほかのタイトルにしてほしかったです」と爆笑の回答をして番組が終了。
終わりに
エヴァだけに限らずモノを生み出すことの大変さと素晴らしさを本当に実感。
シン・エヴァンゲリオンは劇場で見ましたが、私がボケーッと見ていたシーン1つ1つには想像を絶するトライアンドエラーがあるんだな~としみじみしました。
番組の真ん中で密着を受けた理由を「商業的にこういうところを見せた方がいいと思った」と言っていた庵野さん。スタッフの苦悩が垣間見えた私も完全に同意で、ぜひこれをきっかけに少しでも映画の売上が上がり、携わった皆が相応の対価を受け取ってほしいな~とつくづく思ったり。
総じて、私もエンジニアと呼ばれる職種にいますが「モノを作る」という行為に対するモチベーションが爆上げしました。見てよかったです。